会社の支払い拒否理由は9割違法

「会社で起きていることの7割は法律違反」というタイトルの書籍が出版されていますが、残業代の支払い拒絶理由に限定すれば7割どころか9割以上違法というのが、残業代を多く取り扱う弁護士の実感です。

1 残業代込みで支払っている

例え、本人が同意していたとしても人を殺せば処罰されます。労働基準法は、合意の有無にかかわらず、強制的に適用される法律ですので、残業代込みで支払っているという言い訳が通る可能性は0です。

2 外回りの営業に残業代は付かない

確かに、事業場外で働く労働者には労使協定があれば事業場外みなし労働時間制の適用が認められ残業代の支払いを免除される可能性は0ではありませんが、事業場外みなし労働時間制はその要件が厳しく限定されており、同制度の適用が認められる可能性は限りなく0に近いです。具体的には労働時間の把握が困難なときにしか認められませんが、旅行の添乗員も日報などで労働時間を把握できたとして、事業場外みなしは認められませんでした。したがって、ほとんどの場合、このような弁解は認められません。

3 裁量労働制だから

これも2と一緒で要件が厳しく限定されており、実際に仕事の進め方について相当程度裁量がなければ認められません。労使協定では、業務遂行の手段及び時間配分等の決定に関し労働者に対し具体的な指示をしない旨の定めが必要とされていますが、そのような裁量を実際に与えられている労働者はほとんどいません。

4 固定残業代だから

固定残業代を支払っているからといって、支払い済みの固定残業代分を超える残業を行えば残業代の支払い義務が発生するのは当然です。判例は①実質的に見て当該手当が時間外労働の対価としての性格を有していること②固定残業代の金額と労働時間数が他と区分され明示されていること、③固定残業代分の残業時間数を超えて残業が行われた場合別途清算する旨の合意があることが必要としています。したがって、固定残業代以外残業代を一切支払わないという取り扱いは①や③の要件を満たさず、無効となる可能性が大きく、無効とした裁判も少なくありません。

5 管理職だから

管理職でも残業代の支払い義務は免れません。労基法上残業代が免れる管理監督者とは①経営方針決定への参加や労働条件の決定や労務管理について経営者と一体となっていること、②労働時間について裁量があること、③その地位にふさわしい処遇を受けていることの3要件を満たさなければならず、相当好待遇の取り締まり一歩手前の者でなければならず、チェーン店の店長、銀行の支店長代理、学校の教務部長、ホテルの料理長などは管理監督者として認められなかった裁判例があります。

6 残業は勝手にやっているだけで、残業を命じていない

明示的な残業命令がなくても仕事をしている以上残業代は発生します。業務と関係のない労働組合の活動などをしていたというのであれば別ですが、残業しなければ終わらない業務を会社が与えている以上、残業の黙示的な命令があったと認られます。なお、能力がないからとの言い分もありますが、能力の高低と残業代が発生するかは労基法上無関係です。

7 歩合給だから

歩合給でも残業代の支払い義務は免れません。ただし、残業代の計算方法は異なってくる可能性はあります

8 年俸制だから

年俸制は残業代免除の言い訳にはなりません。なお、年俸を14や16で割って月の支給額を決めている企業もありますが、その場合、月の支給額ではなく、年俸を12で割った金額を基準に残業代を計算することになります。